今年ももうすでに半年が経過しました。ここまでくると、年末モードへと一気に加速していくようで、年々特に何かしら急かされる思いに駆られます。
さて、毎年年末になると、その年1年の世相をあらわす1文字(漢字)が話題となります。一昨年は、≪絆≫で、昨年はオリンピックでのメダルラッシュやIPS細胞による山中教授のノーベル賞受賞等で≪金≫であったのはまだ皆さんの記憶に新しいことでしょう。ところで、数年前のその年1年の世相をあらわす1文字として≪偽≫という文字が挙げられていたのを覚えているでしょうか?そのように今日の社会は、様々なところで≪偽≫という文字が跳梁跋扈している時代であるとも言え、本当に真実なるものには中々出遇うことは難しいものです。
そんなことを思う中で想起されるのは、親鸞聖人が「和国の教主(日本の国のお釈迦様)」と尊崇された聖徳太子の≪世間虚仮(せけんこけ) 唯仏是真(ゆいぶつぜしん)≫という言葉や(※『天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)』という刺繍に残されている)、『歎異抄』の後序の「火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもつてそらごとたはごと、まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします」という親鸞聖人のお言葉でありますが、 しかし、そのような尊い真実なるお言葉・み教えがあったとしても、それに出会う「御縁」がなければ、決して私たち一人ひとりのむねに響いてくることはありません。
『雑阿含経(ぞうあごんきょう)』という経典の中に「盲亀の浮木(もうきのふぼく)」という例えが説かれています。この例えを私は、「深い海の底に盲目の亀何百年と生きている。その亀は百年に一度だけ海上に頭を現すという。その時、たまたま浮いて流れてきた木片の僅かに空いた穴からその亀がすっぽりと頭を現す。そのような確立は殆どないと言って良いでしょう。しかし、それよりも稀有であり、有ることが難(がた)しいのが、私たちが人間として尊い「いのち」を生かさせて頂いていることであり、更にはその中でも仏教(もっと言えばお念仏のみ教え)というかけがえのないみ教えに出遇わせて頂いていたことですよ。そのようなご縁を結んで下さったのは、今ではお浄土で尊い仏(ぶつ)となられている故人の方々ですよ。そのことを常日頃より感謝の思いを持ち続けなさいよ。」とお諭し下さっていると味わっています。
この娑婆世界での故人との別れは、確かにつらく悲しいものだったことでしょうが、それと同時に、私たちを「真実なる教え」に導いて下さった、尊いご縁を結んで下さったこともまた確かなことです。亡き方々に特に想いを馳せるこの時期だからこそ、あらためて自今以後も、感謝の思いを持ち続つけていく機縁としたいものです。 合 掌
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